【コンクール結果報告】いけばな大賞2025(第98回全日本いけばなコンクール)に相阿彌流から3名が出場

    2025年(令和7年)11月に開催された『いけばな大賞2025(第98回全日本いけばなコンクール)』の前期展に、華道相阿彌流(相阿弥流;そうあみりゅう)から3名の門人が出場しました。

    ご来場・ご声援をお寄せいただいた皆さまに厚く御礼申し上げます。

    このページでは、『いけばな大賞2025』の相阿彌流出場作品・結果およびコンクールの概要を紹介します。

    目次

    いけばな大賞2025 相阿彌流からの出場作品

    いけばな大賞2025(第98回全日本いけばなコンクール)』には、相阿彌流から下記の3名が出場しました。

    相阿彌流からの出場者一覧
    • 新谷 一景(格花の部)
    • 岩垂 和春(格花の部)
    • 中村 緑水(格花の部)

    いずれも前期展審査部門「格花の部」で、相阿彌流が受け継ぐ古典のわざとこころを携えコンクールに臨みました。

    出場作品①:新谷一景「盥に轡留めの葉蘭3株いけ」(準特選)

    『いけばな大賞2025(第98回全日本いけばなコンクール)』格花部門に出場した相阿彌流・新谷一景の作品。盥に轡留めの葉蘭3株いけ。準特選に入選。
    盥に轡留めの葉蘭3株いけ(新谷一景)

    今回初出場となる新谷一景は、4月の流展に続き本コンクールでも「(たらい)に轡(くつわ)留めの葉蘭(ハラン)」に挑戦。
    相阿彌流の創流譚として伝わるいわれ花馬盥(ばだらい)に轡留めの葉蘭」の再現に挑む過程で培われた轡留めの技術と相阿彌流が継承する葉蘭の花型が持つ美しさをみせる構成をねらいました。

    コンクールの審査結果は「準特選」への入選。
    細部の処理の甘さなどに指摘が集中し、受賞には至りませんでした。

    出場作品②:岩垂和春「唐銅喇叭に伊吹の1種いけ」(佳作)

    『いけばな大賞2025(第98回全日本いけばなコンクール)』格花部門に出場した相阿彌流・岩垂和春の作品。唐銅喇叭に伊吹の1種いけ。佳作に入選。
    唐銅喇叭に伊吹の1種いけ(岩垂和春)

    例年「フリースペースの部」を中心に出品していた岩垂和春は、本大会では出場部門を「格花の部」に変えてのエントリー。
    伊吹(イブキ)の1種いけ喇叭(ラッパ)型の唐銅花入に合わせ、足元(水際)から立ち上がる線の美を強調する作品に仕上げました。
    伊吹自体が元来併せ持つ強靭さしなやかさの双方を引き立たせる構成です。

    コンクールの審査結果は「佳作」への入選。惜しくも受賞には至りませんでした。

    出場作品③:中村緑水「伊吹1種の竹三重いけ」(準特選)

    『いけばな大賞2025(第98回全日本いけばなコンクール)』格花部門に出場した相阿彌流・中村緑水の作品。竹三重切り花器に伊吹の1種いけ。準特選に入選。
    伊吹1種の竹三重いけ(中村緑水)

    本大会が4度目の出場となる中村緑水は、常の稽古通りに枝もの一本勝負でエントリー。
    流内でも「緑の会」発起人と称されるほどに青いものに情熱をかける彼が今年選んだのは、これまでの朝鮮槙(チョウセンマキ)や檜葉(ヒバ)といった力強い主題とはやや異なる、洗練された線を持つ伊吹(イブキ)です。
    これまでの1株いけを発展させ、竹三重切りで大胆にわざをみせる構成で臨みました。

    コンクールの審査結果は「準特選」への入選。惜しくも受賞には至りませんでした。

    【解説】『いけばな大賞』における審査・入選・受賞の仕組み

    ここでは、『いけばな大賞(全日本いけばなコンクール)』の審査や入選・受賞の仕組みについて、簡単に解説していきます。

    審査部門の種類

    いけばな大賞』の一般部門(学生部門=小・中・高校生を除く出品者一般)は、前期展・後期展に分かれ下記の5部門で審査が行われます。

    いけばな大賞の審査部門一覧
    格花の部(前期展のみ)

    生花(せいか/しょうか)立華(りっか)もしくは古典様式を持ついけばなの審査部門。
    相阿彌流では「古典花」と呼んでいる伝統的な様式に属する作品で競われる部門です。

    自由花の部(前期展のみ)

    格花以外の創作的・独創的ないけばなの部門。
    相阿彌流では「現代花」と呼ぶもので、古典様式にない自由度の高さによって、現代的・西洋的な生活空間に合う花や独創性を追究した作品で競われる部門です。

    指定花材の部 格花/自由花(前期展のみ)

    主催者がその年ごとに指定する植物(花材)を主題とした作品で競われる部門
    指定花材の部のなかでさらに格花・自由花の部門に分かれていて、それぞれ別の花材が指定されます。
    『いけばな大賞2025』では、格花の指定花材が赤芽柳(アカメヤナギ)、自由花の指定花材が雲竜柳(ウンリュウヤナギ)でした。

    特別審査の部(前期展のみ)

    過去に格花の部・自由花の部・指定花材の部において「特選」での入選経験がある人や(一社)帝国華道院認定教授資格者のみがエントリーできる部門です。
    過去に高得点で入選した作家のみが出場できるハイレベル部門となります。

    フリースペースの部(後期展のみ)

    床やボックス席から大きな平台まで、自由にスペースを活用して小品から大作などを展示できる部門です。
    希望者のみ審査を受けることができ、非審査対象として各流儀のお家元や熟練者が展示を行うこともあります。

    審査方法・採点

    『いけばな大賞』には各流儀のお家元や顧問等をはじめとする指導者層で構成された審査委員会が設置され、この委員会が審査を行います。
    『いけばな大賞2025』からは部門別に審査委員会を設置するのではなく、前期展・後期展のそれぞれで、同じ審査委員が全作品を審査する形式になりました。

    審査方法は、所定人数の審査員(2025年の場合は8名)それぞれが100点満点で各作品を採点し、その平均点を作品の点数とするものです。
    ただしこのとき、全審査員のうち最高点と最低点を付けた審査員の点数を除いて平均を求める方式となっています。

    また、出場ルールに違反した場合は、あらかじめ定められた点数がそこから減点されることになります(例:「下いけ」行為=花材を事前に細工してくること、いけこみ中に隣の出品者の作業を妨げる行為など)

    「入選」と「受賞」の違い

    『いけばな大賞』に出場して得られる栄誉には、「入選」と「受賞」の2つが存在します。

    このうち、「入選」は審査結果の点数が一定以上を満たすことによって機械的に決定するものです。
    同部門内で複数名の「特選」や「準特選」が生まれる可能性があります。

    対する「受賞」は、「全部門を通して得点1位」「各部門の中で得点1位」など、点数によってより厳選された作品に一定枠ずつ授与されるものです。

    入選基準

    『いけばな大賞』の入選基準は非常にシンプルで、75点からが入選対象となり、5点刻みで上の成績が認定されます。

    獲得点数成績
    90点以上特選
    85点以上準特選
    80点以上佳作
    75点以上準佳作

    受賞基準

    『いけばな大賞』における賞の受賞基準はやや複雑で、下記の表にある賞の上から順に決定していき、その受賞作品を除いたもののなかで高得点のものに賞を割り振る方式です(フリースペースの部を除く)

    スクロールできます
    受賞枠数受賞対象
    いけばな大賞(内閣総理大臣賞)1全部門を通じて最高得点を獲得した作品
    文部科学大臣賞2全部門の格花の中での最高得点獲得作品(1作)
    全部門の自由花の中での最高得点獲得作品(1作)
    農林水産省農産局長賞2全部門の格花の中での獲得点数2位作品(1作)
    全部門の自由花の中での獲得点数2位作品(1作)
    最優秀新人賞(東京都知事賞)1審査部門出品回数3回未満の新人でかつこの賞の受賞歴がない者のなかで最高得点を獲得した作品
    東京都議会議長賞1特別審査の部において、大賞・文部科学大臣・農林水産省農産局長賞受賞作品を除いた最高得点獲得作品
    東京都教育委員会賞2全部門の格花の中での獲得点数3位作品 1作
    全部門の自由花の中での獲得点数3位作品 1作
    足立区長賞4上記の賞を除く各公募審査部門・特別審査部門の1位獲得作品(各部門1作)
    日本いけばな伝統文化協会賞2上記の賞を除く特別審査の部の格花・自由花1位獲得作品(各1作)
    いけばなインターナショナル賞4上記の賞を除く各公募審査部門・特別審査部門の2位獲得作品(各部門1作)
    帝国華道院賞1上記の賞を除く各公募審査部門・特別審査部門の1位獲得作品(1作)
    優秀賞1上記の賞を除く各公募審査部門・特別審査部門の2位獲得作品(1作)
    奨励賞1上記の賞を除く各公募審査部門・特別審査部門の3位獲得作品(1作)
    フリースペース賞3フリースペースの部(審査希望作品)最優秀作品(上位3作)
    『いけばな大賞』の賞一覧(出典:いけばな大賞2025 審査部門出品者説明会資料

    このうち「いけばな大賞(内閣総理大臣賞)」がグランプリに相当し、次年度は審査部門に出場できない代わりに招待出品として特別席に展示されます。

    『いけばな大賞2025』では、未生流の植村卓甫先生が格花の部唯一の「特選」に入選の上、大賞(内閣総理大臣賞)を受賞されました。

    『いけばな大賞2025(第98回全日本いけばなコンクール)』前期展開催概要

    いけばな大賞2025/展示期間:2025年11月23日~24日、会場:シアター1010ギャラリー(北千住マルイ11階)
    イベント名いけばな大賞2025(第98回全日本いけばなコンクール) 前期展
    会期2025年(令和7年)11月23日㈰~24日㈪
    開催時間11:00~18:00
    ※24日㈪は16:00までの開催
    会場シアター1010(センジュ)ギャラリー
    〒120-0034 東京都足立区千住3-92 千住ミルディス1番館(マルイ) 11階
    ※学生部門会場は10階
    アクセス■電車でのアクセス
    JR常磐線・東京メトロ日比谷線/千代田線・東武スカイツリーライン・つくばエクスプレス
    各線「北千住」駅4番出口直通
    入場料入場無料
    主催(一社)帝国華道院
    後援文化庁、農林水産省、東京都、足立区、(公財)日本いけばな芸術協会、(一社)いけばなインターナショナル、日本いけばな伝統文化協会
    お問い合わせいけばな大賞2025実行委員会 (一社)帝国華道院
    TEL:03-3916-2800
    『いけばな大賞2025(第98回全日本いけばなコンクール)』前期展開催概要

    華道相阿彌流では、継続的に『いけばな大賞(全日本いけばなコンクール)』への出品を行っております。
    過去の開催模様は以下の一覧からご覧ください。

    【コンクール結果報告】いけばな大賞2025(第98回全日本いけばなコンクール)に相阿彌流から3名が出場

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